学校長ブログ

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入学式式辞

式 辞

皆さん、おはようございます。今年の冬は例年になく厳しく、おかげでちょうど今、桜が満開になっています。そのような中で2025年度常翔学園中学校・高等学校の入学式を挙行し、保護者の皆さま、西村理事長先生をはじめ、法人設置各校の学校長先生、ご来賓の方々と共に新入生の皆さんの入学をお祝いできる事は本当にうれしい限りです。

ただいま入学を許可しました新入生の皆さん、保護者の皆さま、本日は誠におめでとうございます。すべての教職員を代表し、ご入学を心より歓迎します。そして数ある学校のなかから本校を選んでご入学いただいたこと、心より感謝申し上げます。私たちは、本日から新入生の皆さんと共に生活をし、成長を支える事ができることを心からうれしく思います。何卒ご支援・ご協力の程、よろしくお願いいたします。

さて、皆さんが入学した常翔学園は、1922年、大正11年に開校した関西工学専修学校という学校に始まり、2022年に学園創立100周年を迎えた歴史ある学園です。現在は3大学、2高校、2中学を擁する関西でも有数の学園となっています。以前は大阪工業大学高等学校という名前でしたが、2008年に常翔学園高等学校と改称して現在に至っています。一方中学校は、2011年に開校し14年が経ちました。本日入学の皆さんは15期生になります。

さて、私もそうですが、入学式の式辞で将来の目標を決めよう、と話す校長先生は多いと思います。将来の目標がないと、何をどのように勉強するかという計画も立てられないからです。でも、ようやく受験が終わったところで、先のことは考えられないという人も多いですよね。大学は将来の就職を考えると、できれば難関と呼ばれる大学に入学した方が良いかもしれません。ただし、難関大学に入れば将来安泰という時代は、とうに終わっています。AIの急速な進歩はホワイトカラーを激減させ、銀行の窓口業務や企業の事務職が急速に減るなど、企業の形態を劇的に変化させています。その一方で医療や介護、福祉、交通、物流などエッセンシャルワーカーと呼ばれる職種は全く供給が追いついていません。全国で深刻な人手不足となっている教員もエッセンシャルワーカーと言えるかもしれません。そのような傾向を反映し、多様性の時代、皆さんの進学希望は、海外の大学も含め、本当に多様になっていると感じます。

ところで、この春ヒットしたドラマが3月末で終わりました。日曜夜9時にやっていた、御上先生というドラマですが、ご存知でしょうか。御上先生はかつての学園ドラマの定番の熱血先生ではなく、文部科学省から派遣された官僚で、進学校だけど、日本の多くの学校でよく見られるような問題を抱えた子供たちと共に、自分自身も成長していくドラマです。そういう意味で、まさに令和の学園ドラマでした。

御上先生は、普段から常に生徒に「考えよう」と問いかけ、卒業式当日の最後の授業では、「答の出ない質問」を問いかけました。

「人生かけて考えるべき質問、時に投げ出したくなるほど大変で絶望することがあるだろう。君たちの頭の中の答えが出ない質問は未来そのものなんだ。その答はきっと 弱者に寄り添うものになるだろう。君たちならできるよ。 僕はそれを信じている。」

本日、常翔学園に入学した皆さんもやがてこの、答えの出ない質問に挑むことになります。皆さんは自分の生涯をかけて何がしたいですか。本学園の建学の精神は、「世のため、人のため」から始まります。皆さんは世のため、人のために何をしたいと考えていますか。それこそが皆さんが人生をかけて考えるべき、答えの出ない質問なのです。

そして残念な事に、将来したいこと、入りたい大学をちゃんと持ってないと、偏差値という数字に行先を決められてしまう事になります。自分の人生をそんな数字で決められて良いですか? 

「自分の人生は自分で決めろ!人生の当事者となれ!」私から皆さんに送る、初めての言葉です。

校長室には、This is your life.という文から始まるポスターが私の席の後ろに飾ってあります。「これはあなたの人生です」という言葉は「人生の当事者になれ」という言葉に他なりません。

御上先生は、こうも言っています。

「教育を変えて行くことが必要だ。そこが変わらないと日本が変わらない。~教育行政は少しずつしか変われないだろうが、成し遂げていかねばならない。」

日本の教育、なかなか変えられなくてごめんなさい。全国の教師を代表して謝ります。OECDのPISA調査では、数学的リテラシー、科学的リテラシー、読解力の全てが世界のトップなのに、生徒の皆さんの自己肯定感や社会参画度、学ぶことの楽しさなどは世界最下位。しかも不登校や退学者、自死はここ数年でどんどん増えています。日本の教育は間違いなく問題を抱えています。ドラマでよく使われた、The personal is political.「個人的な事は政治的なこと。」この言葉が意味しているように、これは日本全国の学校で起こっており、国全体で考えないといけない問題です。

でも常翔の先生方は皆さんのために、一生懸命学校を変えようとしています。自らが変わろうとしています。すばらしい先生方です。本校では、生徒の皆さんが主人公、生徒主体の教育を進め、皆さんを支援しようとしています。この4月から、生徒指導部は生徒支援部に、進路指導部は進路支援部へと名称を変更しました。これは、生徒の皆さんが中心の学校つくりを意味しています。本校の校則は、生徒・保護者・教員の三者からの代表から組織される、校則変更プロジェクトが検討し、変更の提案をしています。また教員が主語となる指導ではなく、生徒が成長するための支援を行い、不登校支援や学習支援についても対応します。

進路支援部では、生徒の皆さんが自分の夢である進路を達成するための、いろいろな施策を実施します。学園内の各大学は就職の良さは言うまでもなく、皆さんの将来の希望を叶えられるような学びができる学部学科が揃っていますので、ぜひ検討してみてください。今後学園内大学との連携をさらに密なものにして、生徒の皆さんの希望をできるだけ叶えられるような高大接続を実現したいと思います。

また、2年生ではグローバル探究コースが始まります。英語の授業はCLIL、第2外国語としての中国語、探究型修学旅行のMoG、模擬国連、そして摂南大学との連携授業など、多くの新しい取組みが始まります。

今年、万博が開催される大阪は、今、世界から多くの人々が来られていますが、この傾向は今年で終わるわけではありません。にもかかわらず、海外に出ようとする若者の数は、アジアの諸外国と比べかなり少ない状況です。内向きと言われる日本の若者に知識と経験を積んでもらい、世界で活躍できる人材に成長してもらいたいと思っています。これは、ただの国際系コースではなく、日本の教育をここから変えていく、第一歩となる大事なコースであり、我々教員もそういう気概を持ってコース運営に取り組みます。

新入生の皆さん、改めまして入学おめでとう!皆さんは今日から常翔学園中高の一員です。いろんな理由があると思いますが、皆さんは自ら常翔を選んで、本日入学されました。皆さんの人生ですから、皆さんが常翔でやりたいと思う事を思い切りやってください。先ほど述べた、This is your life.のポスターには、こういう一文があります。「人生とは、あなたが出会う人たちの事であり、その人たちとあなたがつくるもの。」皆さんが、良い友人と教師に恵まれ、最高の学校生活を送られる事を祈念しまして、私の式辞といたします。

2025年4月7日

常翔学園中学校・高等学校

校長 田代 浩和