学校長ブログ

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中学卒業式式辞

今年は例年になく厳しかった冬もようやく寒さが和らぎ、春の訪れを間近に感じるようになりました。本日ここに常翔学園中学校2024年度の卒業式を、卒業生、ご来賓、保護者の皆様とともに迎えられたことはこの上ない喜びです。保護者の皆様には、お子様の姿を目にされ、それぞれに幼いころからの様々なこと、中学受験、入学後の出来事などが思いだされ、感慨もひとしおのことと思います。今日ここにお子様が卒業式を迎えられましたこと、心よりお喜び申し上げます。またこの間、お子さまを温かく見守っていただき、本校の教育活動にも多大なる協力を賜りましたこと、重ねてお礼申し上げます。本当に有難うございました。

さて、ただいま卒業証書を授与しました皆さん、本当におめでとうございます。皆さんが常翔学園中学校の12期生として、期待と不安を持って入学して3年が過ぎました。皆さんにとっての常翔学園はいかがでしたか。この3年間、楽しかったことも辛かったことも、たくさんあったと思います。クラスメートと上手く行かず悩んだり、勉強がはかどらず苦労したり、中には体調がすぐれず学校に来るのが大変だった人や、親から叱られたり、よく喧嘩をして悩んでいた人もいるかもしれません。しかし皆さんは、多くのことを経験し成長して、今日の卒業を迎えています。皆さん全員を心よりお祝いし、これまでの頑張りに対し敬意を表したいと思います。本当によく頑張りました!皆さんを応援してくれた保護者や家族の方々、先生方に対しても、感謝を忘れないようにしてください。せっかくの機会ですので恥ずかしがらずに、自分の言葉で感謝の気持ちを表してもらいたいと思います。

さて、本日は皆さんへのはなむけの言葉として、昨年亡くなられた日本の偉大な指揮者、小澤征爾さんのエピソードを紹介したいと思います。彼は1935年に満州で生まれました。いわゆる “音楽エリート” ではなく、音楽との出会いは5歳のクリスマスに母が買ってくれたアコーディオンで、ピアノを始めたのは10歳の時でした。日本に帰国後、ピアニストになる夢がありましたが、14歳の時、日本交響楽団(現・NHK交響楽団)のコンサートで、ロシア出身のピアニストがピアノを弾きながら指揮をする演奏を聴いて、指揮に強い魅力を感じました。そして母の遠縁にチェロ奏者の齋藤秀雄氏がいることが分かり、弟子入りを志願しました。中学3年生の時でした。齋藤秀雄は桐朋学園で多数の著名な指揮者や弦楽器奏者を育てた偉大なる音楽家で、小澤の生涯の師となりました。

もう1人、彼に影響を与えたのが、指揮教室で巡り会った山本直純氏です。彼も、後に大変有名な指揮者となりましたが、当初小澤に指揮を教えたのは彼だったのです。音楽科のある高校、短大に進学後に、「音楽をやるなら外国へ行って勉強するしかない」と強く思うようになりました。、山本は「音楽のピラミッドがあるとしたら、オレはその底辺を広げる仕事をするから、お前はヨーロッパへ行って頂点を目指せ」と言って彼を後押ししました。23歳の時、持ち前の行動力を発揮し、スクーターと共に貨物船で単身フランスへ渡りました。その後は快進撃です。毎夏アメリカのマサチューセッツ州で行われるタングルウッド音楽祭への参加を機に、20世紀後半の指揮界を二分するカラヤン、バーンスタイン両雄の薫陶を受けました。

しかし、日本では順風満帆というわけではありませんでした。1962年には、指揮契約を結んだNHK交響楽団からボイコットされる事件が起きました。楽員から27歳の小澤に対し「生意気だ」「態度が悪い」などの感情的反発が生まれたのです。彼はこれを機に日本に見切りをつけ、世界に目を向けることになりますが、皮肉にもそれが 「世界のオザワ」 誕生を招く事になりました。その後、タングルウッド音楽祭、サンフランシスコ交響楽団、ボストン交響楽団、ウィーン国立歌劇場などの音楽監督を歴任しました。タングルウッドでは、彼の功績を称え「セイジ・オザワ・ホール」が建てられもしました。

小澤は間違いなく日本の音楽史に残る一番の指揮者です。彼がここまでになったのは齋藤秀雄という偉大なる師と、山本直純という偉大なる友人がいた事が大きく影響しています。そして、小澤に限らず私たちも人生において、大きく影響を受けるのは学校の先生と友人なのです。ですから、私も含めて常翔の教員は皆さんにとって最高の師でありたいと常々思って接してきましたが、いかがでしたでしょうか。また同様に皆さんも自分の友と、お互いを高められるような人生を送ってもらいたいと思います。高校へ進学後、また新しい環境が皆さんを待っています。高校では皆さんの世界がさらに広がります。さらに多くの人たちとの出会いが皆さんを成長させてくれる事と思います。

小澤はさらにこんな事を言っています。「日本製の地球儀を眺めると、日本が赤く塗られていますでしょ。世界全体から見ると、日本語圏はあれっぽっちです。そこだけの価値観で一生を過ごすのは、もったいないですよ。」またこうも言っています。「テレビで見たり、インターネットで調べたりで世界を知った気持ちになってしまう。確かに私たちが若い頃よりもはるかに海の向こうの情報は入ります。でも、それは他の誰かの体験であって、自分自身の経験ではありません。」さすが行動力の人ですね。みなさんはグローバル社会に生きています。そして今は貨物船に乗らなくても簡単に海外に行ける時代。是非とも海外へ出て、自分の目と耳で多くの事を感じ、学んで成長してください。皆さんの可能性は無限大です。世界を意識し、世界に羽ばたく人物になってください。

今日の卒業式は、人生の一つの節目であるとともに、新しい船出でもあります。その船出に対し、皆さん全員に心からエールを送りたいと思います。がんばれ!常翔生!

今日という日を、これから始まる高校生活に向けてさらに力強く一歩を踏み出す、「飛躍」を誓う日にしてください。皆さんの今後の活躍を願い、わたしからの式辞とします。

2025年3月8日           

常翔学園中学校  

校長 田代 浩和

卒業おめでとう!