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学校長ブログ
後援会だよりは、中高の後援会で作成している新聞です。年2回発行していますが、秋の号が配布されました。冒頭に私の挨拶の文章が載っておりますが、記録の意味もこめて、ここにも掲載しておきます。

「世界が揺れる時代に、生き方を学ぶ」
日本は戦後80年が経ちました。その後、高度経済成長、冷戦の終結、平成のバブル経済、そしてその後の「失われた30年」を経て、私たちは現在、歴史の大きな転換点に立っています。ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから3年以上が経ちましたが、戦火はいまだ収束の兆しを見せず、多くの命が失われています。中東では、イスラエルとイラン(パレスチナ)の対立がさらに激化しています。こうした地域紛争の背後には、アメリカの外交方針の変化、特にトランプ大統領の政策が影響して、世界は多極化し、価値観や利害の衝突がかつてないほど複雑化しています。
かつて「グローバル化」は、国境を越えて人々がつながる希望の言葉でした。しかし今、世界は分断と対立に向かっているようにも見えます。経済、安全保障、宗教、情報――あらゆる分野で対立軸が浮き彫りになり、人類が築いてきた国際秩序が再構築を迫られていると感じます。そんな中、私たちが暮らす日本では、大阪・関西万博が開催され、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げ、持続可能な社会、健康、テクノロジー、共生といったキーワードをもとに未来へのビジョンが提示されています。今、世界の一部で人々が命を奪い合っている一方で、日本では人々が未来の命をどう輝かせるかを真剣に考えています。このギャップに私たちはどう向き合うべきでしょうか。
さらに、AI(人工知能)の進化が社会のあらゆる場面に影響を与え始めています。ChatGPTのような生成AIをはじめ、医療、金融、教育、芸術など、さまざまな分野でAIが台頭し、これまで「常識」とされていた職業構造や働き方が大きく変わり、将来の見通しが不透明になってきました。例えば、アメリカのニュースでは、AIが職業を奪い始め、トップ大学を卒業した学生でさえ就職が難しくなっていることが報じられています。現在はかつてないほどの人手不足ですが、近い将来、ホワイトカラーと呼ばれる仕事、つまりオフィスワーカーの仕事は激減すると予測されています。こうなると、「勉強する意味や目的」も見直される時代に突入していると言えます。
昨年発表されたPISA調査の結果では、日本人は数学的リテラシー、科学的リテラシー、読解力のすべてで世界一の高水準を誇っているにもかかわらず、子どもたちの自己肯定感や自己有用感は世界最下位、また自分たちが社会に参画して変化をもたらす力も最下位という結果が出ました。こうした激動の時代に、子どもたちに本当に必要な力は何か。――自ら考え、自分なりの視点で判断し、他者と対話しながら柔軟に行動できる力。変化を恐れず、時には立ち止まりながらも、自分の信じる道を進んでいく強さ。世界の課題を見つけ、解決する力。それこそが、これからの世界を生きる子どもたちに必要な力だと確信しています。
では、そのような力はどう育てればよいのでしょうか。答えの一つは、「自分の目で世界を見ること」にあると思います。アンテナを張って自ら積極的にいろいろな場所に出かけることも大切です。最も効果的なのは、海外留学です。留学というと英語の勉強が目的に感じられるかもしれませんが、日本を離れることで、広い視野を持ち、世界で起こっている現実と自分とのつながりを探してみることができます。そこから、「自分は何のために学ぶのか」「どんな未来に貢献したいのか」という問いが自然と湧き上がってくるはずです。
「将来の目標」は、最初から明確である必要はありません。むしろ、多くの生徒たちにとっては、進んでいく中で見えてくるものです。大切なのは、問いを持ち続けること、そして目の前の学びに真摯に向き合いながら、道を探し続けることです。
保護者の皆様におかれましては、どうかお子様の小さな興味や疑問に耳を傾け、共に考え、応援していただければ幸いです。時代は混迷を深めていますが、それでも人は学び、成長し、よりよい社会を築こうとする力を持っています。教育とは、その可能性を信じ続ける営みです。
今後とも、本校の教育活動にご理解とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
以上