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学校長ブログ
毎年この時期に進路支援部では「進路のしおり」を発行しています。
これは主に、昨年度の卒業生の「進路のまとめ」と今年度の大学や専門学校・就職希望者の「進路について」のいろいろな資料を載せており、昨年度の卒業生や担任の先生方、それと進路指導部の先生方でデータを蓄積したものをまとめ、わかりやすく使いやすい本にまとめたもので、まさに汗と涙の結晶です。高校生のクラスでの進路指導に使ってもらったり、各ご家庭で進路を考える際に参考にしてもらったりしています。
毎年、本の冒頭に巻頭言として校長の挨拶を載せさせて頂いています。できるだけその時代の事件を盛り込もうと意識したものですが、今年はローマ法王の逝去に伴うコンクラーベとまさに現在起こっている二つの戦争についての話を盛り込みました。ここにも掲載しておきますので、良かったらお読みください。
学びの目的を再確認しよう
校 長 田 代 浩 和
この5月、世界中の注目を集めた「コンクラーベ(教皇選挙)」において、システィーナ礼拝堂の煙突から白煙が上がり、新しい教皇が誕生したというニュースが大きく報じられました。新教皇は、史上初となるアメリカ出身のレオ14世です。
ちょうど時期を同じくして、「教皇選挙」を題材とした映画が公開され、話題となっていることをご存知でしょうか。私も鑑賞しましたが、サスペンス調でありながら、人間の信念や葛藤に深く迫る作品でした。主人公は、選挙管理を担う立場として、自らの「確信」と「疑い」と向き合いながら揺れ動きます。
劇中、こんな印象的なセリフがあります。
“Our faith is a living thing precisely because it walks hand-in-hand with doubt. If there was only certainty and no doubt, there would be no mystery and no need for faith.”
(我々の信仰が生きているものだと言えるのは、それが「疑い」と共に歩んでいるからだ。もし「確信」だけがあって「疑い」がなかったら、そこに神秘はなく、信仰自体が不要となるだろう)
現代社会では、自らの考えを唯一の正解とし、異なる意見に耳を貸さず攻撃してしまう風潮が広がっているように感じます。SNSなどを通じた過剰な監視、コロナ禍の自粛警察、さらには著名人や政治家への一方的なバッシングなど、その傾向は加速しています。
国際社会に目を向ければ、ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエル・パレスチナ問題、インドとパキスタンの緊張、トランプ政権の関税政策や中国の覇権主義など、世界はますます分断と対立を深めています。加えて、地球温暖化の問題も深刻化しており、2050年には夏の気温が47度に達し、2億人以上が居住地を失う「気候難民」になるとも予測されています。
だからこそ、私たちは今一度、「学びの目的とは何か」を問い直す必要があります。本校のミッションは、「人々が幸福で平和に生きることができる世の中を創る」こと。そのために、生徒一人ひとりが自律的な学習者としてグローバルな視野を持ち、未来を切り拓く力を育んでいくことを大切にしています。
皆さんの学びは、「自分の幸せ」のためだけではありません。「世界の幸福」のために、自分は何ができるのか、どう貢献できるのかを考える——それが進路選択であり、キャリア教育の本質です。
今年度から「進路指導部」は「進路支援部」へと名称を改めました。進路はあくまで生徒の皆さん自身が選び取るものであり、私たち教職員はその選択に寄り添い、支援する存在でありたい——その思いが込められています。
本冊子は、昨年度の高校3年生の担任の先生方のご協力のもと、進路支援部が心を込めて作成しました。ぜひ参考にしながら、自分が心から学びたいと思える大学、自分らしく過ごせる進路を見つけてください。
皆さん一人ひとりの進路が、世界を少しでも幸せにする道へとつながっていくことを、そして「分断と対立」ではなく、「対話と協調」を通して平和で優しい世界が生まれる事を心から願っています。
以上