学校長ブログ

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中学校卒業式式辞

2024/03/09

式 辞

厳しかった冬もようやく寒さが和らぎ、春の訪れを間近に感じるようになりました。本日ここに常翔学園中学校2023年度の卒業式を、卒業生、ご来賓、保護者の皆様とともに迎えられたことはこの上ない喜びです。保護者の皆様には、お子様の姿を目にされ、それぞれに幼いころからの様々なこと、中学受験、入学後の出来事などが思いだされ、感慨もひとしおのことと思います。今日ここにお子様が卒業式を迎えられましたこと、心よりお喜び申し上げます。またこの間、お子さまを温かく見守っていただき、本校の教育活動にも多大なる協力を賜りましたこと、重ねてお礼申し上げます。本当に有難うございました。

 

さて、ただいま卒業証書を授与しました皆さん、本当におめでとうございます。皆さんが常翔学園中学校の11期生として、期待と不安を持って入学して3年が過ぎました。皆さんにとっての常翔学園はいかがでしたか。この6年生の時から新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、マスク生活、各種行事や部活動における変更があり、多くの事が制限を受けました。3年生になって、ようやくコロナ禍も終了し、マスクも外せるようになりました。この3年間、楽しかったことも辛かったことも、たくさんあったと思います。クラスメートと上手く行かず悩んだり、勉強がはかどらず苦労したり、中には体調がすぐれず学校に来るのが大変だった人や、親から叱られたり、よく喧嘩をして悩んでいた人もいるかもしれません。しかし皆さんは、多くのことを経験し成長して、今日の卒業を迎えています。皆さん全員を心よりお祝いし、これまでの頑張りに対し敬意を表したいと思います。本当によく頑張りました!皆さんを応援してくれた保護者や家族の方々、先生方に対しても、感謝を忘れないようにしてください。せっかくの機会ですので恥ずかしがらずに、自分の言葉で感謝の気持ちを表してもらいたいと思います。

 

さて、中学時代、私からの最後のお話として、小説「下町ロケット」のモデルになった植松努さんという方を紹介したいと思います。子どものころから紙飛行機が大好きで宇宙にあこがれ、大学では流体力学を学び、名古屋で航空機設計を手がける会社に入社されました。その後北海道に戻り、父親が経営する植松電機に入社。電磁石の開発製作を手がけますが、ロケットの研究を進めていた北海道大学大学院の永田教授との出会いをきっかけに、ふたたび宇宙へのあこがれを胸に、ロケット研究開発をされた方です。

 

小学生の頃は勉強ができなくて悩んだそうですが、将来は飛行機やロケットの仕事をしたいと言った時、母親は「あんたには無理。」とも「頑張ればできる!」とも言いませんでした。その代わり「思うは招くだよ」と、気休めの言葉を教えてくれたそうです。でも彼はその言葉のおかげでいろんなことができるようになった気がして、その言葉が大好きだそうです。

 

学校で、たまにこんな人を見かけるかもしれません。みんながあきらかにラジオ体操をしているのに、一人だけグラウンドに絵を描いているような少年、それが彼です。そんな人がロケットを作れるようになったのは、北海道大学の永田先生との出会いがきっかけです。実は以前からロケットに興味がありましたが、ロケットは危ないからつくっちゃいけないものと諦めていました。ところが永田先生は、「危ないなら、安全なロケットをつくれば良いと考えていたのです。そこで、植松さんは、これは運命だと感じ、以来ロケット作りに邁進されました。

 

彼はこう言っています。「人の出会いには意味があります。人との出会いによって、人生はいくらでも変わります。だから、今までがどんなにダメでも、いまがどんなにつらくても、絶望しなくていいんです。勇気を出して、新しい誰かと出会うチャンスを見つけてください。それだけで、人生はどんどん変わっていくんです。」

 

永田先生は素晴らしい研究をしているがお金が無い。植松さんもお金が無いが、工作が得意。また、植松さんにはロケットの知識が足りず、永田先生は物を作る力が足りない。彼はこう言っています。「実は、人は足りないから助け合うんです。だから、足りない自分をダメだと思わないでください。どこかで誰かがあなたの助けを待っていますよ。」

 

その後は、ロケットだけではなく、人工衛星や、無重力の実験もできるようになりましたが、それは他のどの会社もやらないことでした。しかし、残念なことに日本では他と違うといろんなことを言われます。でも、実は違うことこそ必要で、彼の会社にはいろんな人達が実験にやってきて、JAXAと共に日本の宇宙開発を牽引するまでになりました。

 

植松さんによると、奇跡を起こすキーワードがあるそうです。その言葉を使えば、誰でも奇跡を起こせるそうです。それは「違うはすてき!」という言葉です。「人と違うこと」に出会った時におかしいとか、変とか思うのではなく、取りあえず「すてき!」って言っておけば、奇跡が起きるそうです。他の人とちょっと違う自分に向かっても、「すてき!」って言って欲しい。人と違うってことは素晴らしい個性なんです。そんな皆さんのことを誰かが待っています。

 

さて、今では当たり前のように世界中で飛行機が飛んでいますが、これは昔、飛行機を作って飛ばしたいと心から願った人たちが、何千回、何万回と失敗した後にようやく飛ばせるようになった結果です。彼ら開発者の「思いが招いた結果」なのです。そこでは失敗を恐れない、という強い姿勢が大変大事になってきます。失敗があるからこそ、その向こうに成功があります。

 

卒業生の皆さんは、今、どんな「思い」を持っていますか。「思うは招く。」その思いをかなえようと強く念じ、今後も努力を続けてください。いつかその思いが良い結果を招いてくれるでしょう。また、植松さんにとっての永田先生は、自分の運命を変え、心の支えとなるメンターであり、一緒に夢を叶える同志でした。そのような、人生を変える運命の人に皆さんがきっと巡り合えることを祈っています。意外とその人は皆さんのすぐ身近にいる人かもしれません。

 

今日の卒業式は、人生の一つの節目であるとともに、新しい船出でもあります。その船出に対し、皆さん全員に心からエールを送りたいと思います。がんばれ!常翔生!

 

今日という日を、これから始まる高校生活に向けてさらに力強く一歩を踏み出す、「飛躍」を誓う日にしてください。皆さんの今後の活躍を願い、わたしからの式辞とします。

2024年3月9日

常翔学園中学校

校長 田代 浩和

卒業おめでとう!