学校長ブログ

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高等学校卒業式式辞

2024/03/01

式辞

 厳しかった冬の寒さもようやく和らぎ始め、春の息吹を感じられる季節になってきました。本日ここに常翔学園高等学校の2023年度卒業式を、卒業生、保護者、西村理事長先生をはじめとしてご来賓の方々とともに迎えられたことは、この上ない喜びです。保護者の皆様方には、卒業式を迎え入場するお子様の姿を目にされ、幼いころからの様々な思い出、そして本校の受験や入学時のことが思い出され、感慨もひとしおだと思います。今日ここにお子様が卒業を迎えられましたこと、心よりお喜び申し上げます。またこの間、お子さまを温かく見守っていただき、本校の教育活動にも多大なるご協力を賜りましたこと、重ねてお礼申し上げます。本当に有難うございました。

 

さて、ただいま卒業証書を授与しました皆さん、ご卒業誠におめでとうございます。常翔学園高校での3年間、常翔学園中学校からの人たちは6年間になりますが、皆さんにとっての常翔学園は如何でしたでしょうか。いろいろなことがあったと思いますが、振り返ればあっという間だったのではないでしょうか。中学3年生の時から新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、マスク生活、試合や合宿、各種行事の変更と続き、多くの学校行事や部活動が制限されました。3年生になって、ようやくコロナ禍も終了し、マスクも外せるようになりましたが、2年次までは制限も多く、不自由な思いをしたかもしれません。そんな中でも皆さんは努力し、工夫して学校行事を成功させてきました。修学旅行や文化祭、体育祭など、いい思い出はたくさんできたのではないでしょうか。辛かったこと、苦しかったこともあるかもしれませんが、いろいろな経験を通して、成長された事と思います。今、皆さんはそれを乗り越えて、ここにいます。今日は、皆さんそれぞれの頑張りに対し、心より敬意を表したいと思います。本当によく頑張りました。共に過ごしたクラスや部活の仲間たちと、今までの頑張りに対しお互いをたたえ、喜びを分かち合ってください。そして、何よりも今まで皆さんを支えて頂いた保護者やご家族の方々に、感謝の気持ちを忘れないでください。これからは、自分が周りの人たちを支える番になるということを意識し、歩んで行って欲しいと願っています。

 

さて、今日、皆さんに贈る言葉として、まずは「マネジメントの父」と呼ばれている、ピーター・ドラッカーの言葉を紹介したいと思います。「もしドラ」のドラッカーと言えば知っている人がいるかもしれません。誰よりも早く社会の変化を捉え、その本質を指摘した経営学者です。20年近く前に亡くなられましたが、大変日本と関わりのある人でした。

 

彼は日本に興味を持ち、歴史や文化を調べるうちに、まず明治維新に驚きました。国中をひっくり返すような革命なのに、それほど大きな血が流されず成し遂げられたからです。次に驚いたのは第二次世界大戦後の復興です。日本は敗戦、都市部は焼け野原になりました。当時の日本を彼はこう述べています。「私は日本の第二の奇跡を目にしました。それは、混乱と廃墟からの復興でした。人類の歴史上、戦後の日本に似たものが全くありません。」このように、日本は二度も奇跡を起こした世界にも稀な国だったのです。皆さんはそんな奇跡の国に生まれ、育ったことを、誇りに思ってもらいたいと思います。

 

しかし、ドラッカーは、日本に対して「成功体験は仇になりかねない」と繰り返し警告しました。残念ながら我が国は現在、経済的には衰退の道を辿っています。その最大の原因は、少子高齢化や人口減少と言われていますが、もしかしたら「教育」や「学ばない社会人」のせいかもしれません。と言うのは、彼はこう言っているからです。「現在の教育システムはすでに過去のものとなった産業のためのものです。日本には古いシステムによる高等教育を受けた人が極めて多い。現在必要なのは、そういう高学歴の人を再教育し、新しい時代に活用する道を開く事です。」だからこそ、今国を挙げて教育改革が行われており、急激に変化する時代に付いていくために、大学卒業後も学び直さなくてはならない時代になっています。しかし、残念なことに、統計では日本はダントツで社会人になったら学ばない国となっています。社外学習・自己啓発で「何も行っていない」人の割合は断トツの1位、実に52.6%の人は読書すらしていないとのことです。ワースト2位のオーストラリアが28.6%なので、いかに日本が突出しているのかが分かります。

 

若者に対してはこう言っています。「自らに対し、少ししか要求しなければ、成長はしない。極めて多くを要求すれば、何も達成しない人間と同じ程度の努力で、巨人にまで成長する。」つまり、何を目指すかで全てが決まると言っても過言ではないのです。だからこそ、目標を決める事は大事なのですが、「今、何を目指しているのですか?」と聞かれて、皆さんは迷わず自分の考えを言えるでしょうか?

 

将来したい事は、すぐに見つかるわけでもなく、決めたところでそれが変わる事もあります。大事なのは、「自分にとっての北極星」を見つけることです。北極星は「動かない星」であり、季節・時間を問わず、いつでも同じ場所に見つけることができるので、古来より旅人を導く星として認識されていました。北極星は、歌手になりたいとか、医者になりたいとか、そんな表面上のものではありません。なぜ、歌手や医者になりたいのか、その理由を考えてみれば自分の北極星がわかります。歌手であれば「人を感動させて幸せにしたい」、医者は「病気で苦しんでいる人を助けたい」。そのように、自分が一番自分らしく感じられ、生涯通してブレないものが北極星です。この、北極星のような「何か」を持つことができたら、人生で迷った時の道しるべとなります。さらに、自分の北極星を見つけていたら、「自分には今何があり、どこに向かっているのか?」「そこに向かう道はどれか?」という道筋が見えてきます。これが「自分軸」です。つまり、自分軸とは北極星と自分を繋ぐ一本の線であり、実は過去の自分からも繋がっているのです。

 

皆さんは、自分の人生を賭けてやろうとしていることはありますか。それは「夢」と呼ばれるものです。その夢を追いかける時に、時に自分を見失ってしまう事があります。あるいは、ドリームキラーと呼ばれる人たちが、皆さんが夢を達成するのを邪魔することがあるかもしれません。そんな時に、常にブレない北極星があれば、それを目指して、人生という航海を旅する事ができます。そして、その夢を共に語り合い、夢に向かって共に歩んでくれる友だちは見つかりましたか。高校時代の友だちは生涯の友になる事が多いです。ここで育んだ友情を大事にしてください。

 

今日の卒業式は、高校生活の終了とともに、人生の新しい船出を意味します。 その船出に対し、皆さん全員に心からエールを送りたいと思います。がんばれ!常翔生!

 

最後になりましたが、常翔学園高等学校が、皆さんの母校としていつまでも誇れる学校となるよう、これからも教職員一同で努力を続けていきます。これからも母校を訪れ、我々に成長した姿をぜひ見せに来てください。皆さんの今後の活躍を祈念して、私からのはなむけの言葉とさせていただきます。

 

2024年3月1日

常翔学園高等学校

校長 田 代 浩 和

卒業おめでとう!