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大阪府の授業料完全無償化制度について

2023/07/03

吉村知事が2回目の府知事に当選した時の公約で、府は授業料完全無償化制度を構築しようとしています。今回は所得に関係なく、全ての生徒の授業料を完全無償化しようとするもので、全国に先駆けて実施が検討されています。この理念そのものは大変すばらしいものですが、マスコミの連日の報道で話題になっている通り、この制度は大阪府限定のキャップ制という私学の負担の上に成り立っている制度です。

 

新しい制度で大きく変わる点は「世帯ごとの負担」分です。現状は、世帯年収に応じて、一定額をそれぞれ負担していますが、新制度では世帯年収や子どもの数に関係なく、高校の授業料が「完全に」無償になります。ですので、生徒・保護者の皆さまからは一見大変すばらしい制度に見えてしまうのですが、実は次のような問題点があります。

 

現在、国と府の補助金をあわせた上限額を60万円と定め、それを超える授業料については年収800万円未満の世帯を対象に、私立学校側が負担する「キャップ制」という制度が敷かれています。本校の授業料は、61万8千円ですので、1万8千円がこれに当ります。この「キャップ制」を実施しているのでは大阪府のみで、京都府などでは保護者負担となっています。新しい制度で所得制限が撤廃されると、図の通り、これまで保護者が負担してきた分も合わせて、すべて学校側が負担することになります。大阪府内で授業料60万円超えは41校 新制度で最大8000万円負担増の学校もあり、そうなると中には経営が立ち行かなくなる学校も出てきそうです。

 

私学が反対する主な理由は、「支出が増えて、私学ならではの特色が失われる」「教育の質の低下が懸念される」です。そのため、経費を節減するため、たとえば常勤の先生をできるだけ非常勤の先生に変えたり、お金の掛かる体育祭、文化祭、海外研修(本校であれば予備校講習やJOSHO+、部活動、ハートグローバルなど)といった大きな行事を取りやめたり、簡略化したりということになります。また、実質的に授業料を上げる事ができないので、私学ならではの特色ある教育ができないということになり、公立ではなく、わざわざ私学へ行く意味がなくなってしまいます。また将来的に、キャップ制の負担分を回収するために入学金を大きく上げざるを得なくなります。そうすると今まで授業料完全無償だった世帯の負担が増える事になり、何のための制度変更かわからなくなってきます。

 

この夏を目途にいろんな学校の意見を聞いて制度設計するということで、本学も6月30日にヒアリングがありました。くれぐれも教育の質を落とさずに、生徒が不利にならないような制度にしてもらいたいものです。また、この件で吉村知事と興国高校の草島校長、清風南海の平岡校長のテレビ討論がYOU TUBEにあがっていますので、良かったらご視聴ください。

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