学校長ブログ

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中学卒業式 式辞

2023/03/11

式 辞

  例年になく厳しかった冬もようやく寒さが和らぎ、春の訪れを間近に感じるようになりました。本日ここに常翔学園中学校2022年度の卒業式を、卒業生、ご来賓、保護者の皆様とともに迎えられたことはこの上ない喜びです。保護者の皆様には、お子様の姿を目にされ、それぞれに幼いころからの様々なこと、中学受験、入学後の出来事などが思いだされ、感慨もひとしおのことと思います。今日ここにお子様が卒業式を迎えられましたこと、心よりお喜び申し上げます。またこの間、お子さまを温かく見守っていただき、本校の教育活動にも多大なる協力を賜りましたこと、重ねてお礼申し上げます。本当に有難うございました。

 

さて、ただいま卒業証書を授与しました皆さん、本当におめでとうございます。皆さんが常翔学園中学校の10期生として、期待と不安を持って入学して3年が過ぎました。皆さんにとっての常翔学園はいかがでしたか。いろいろなことがあったと思いますが、振り返ればあっという間だったのではないでしょうか。思い起こせば、皆さんは令和になって初めての入学生でした。しかし、入学直前の2月から新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、入学後すぐに学校は休校、オンライン授業、マスク生活、分散登校、各種行事の中止や変更と続き、今まで当たり前であった日常が一変してしまいました。今ようやく第8波が収束し、マスクこそしてもらっていますが、卒業式もほぼ以前のように執り行えるようになりました。

 

この3年間はいろいろと制限が多く、思いっきり歌ったり、大きな声を出したり、友達とご飯を食べながら楽しく話をしたりという事はできなかったかもしれません。しかし、そのような中にあっても皆さんは、いろいろな事を経験し、成長してきました。楽しいこともたくさんあったと思いますが、同様に辛かったこと、苦しかったこともたくさんあったと思います。ふざけてよく先生に叱られたり、クラスメートと上手く行かず悩んだり、勉強がはかどらず苦労したり、中には体調がすぐれず学校に来るのが大変だった人や、親と喧嘩し自分の事をわかってもらえないと悩んでいた人もいるかもしれません。しかし皆さんは、この3年間でいろいろなことを経験し成長して、今日の卒業を迎えています。皆さん全員を心よりお祝いし、これまでの頑張りに対し敬意を表したいと思います。本当によく頑張りました!今日の卒業を共に過ごしたクラスやクラブの仲間たちと互いに讃え合い、喜びを分かち合ってください。そして、大事な事ですが、皆さんが今ここに卒業式を迎えられたのは、保護者や家族の方々の支え、そして友達、先生方の応援があってのことです。これらの人たちへの感謝も決して忘れてはいけません。せっかくの機会ですので恥ずかしがらずに、自分の言葉で感謝の気持ちを表してください。

 

さて、皆さんに贈る言葉として、世界一の自動車メーカー、トヨタの社長が母校であるアメリカのバブソン大学の卒業式でスピーチした内容を紹介したいと思います。豊田社長はアメリカに留学中、慣れない英語での授業についていくため、必死に勉強して、寮、講義、図書館の行き来を繰り返す毎日でした。楽しい事はほとんどなかったけど、美味しいドーナツに楽しみを見出したそうです。豊田社長曰く、アメリカのドーナツは心躍る、衝撃的な大発見だったそうです。みんなにそんな自分だけの「ドーナツ」を見つけてほしい。つまり、自分をハッピーにしてくれるものを見つけて、離さないでほしい、と訴えました。

 

ほかの人には代えられない、皆さんの自分だけのドーナツはありますか。その自分の「好き」を大事にして、とことん伸ばしてほしいと思います。「そんな物はない」という人もいるかもしれません。でも、誰にだって、好きな事はあるし、個人の才能もあるんです。無いと言う人はまだ気づいてないだけです。常翔学園中学校のキャリア教育、あるいは一般教科の授業も含めて本校の教育は、そのような自分だけのドーナツを探してもらうために実施していると言っても言い過ぎではないでしょう。

 

豊田社長はさらにこう言ってます。「大事なことは、何歳になっても、いつだって、新しいことを学ぶことができるということです。学ぶ人であり続けてください。それが何よりもすてきな事なんです。両親、友人、感化してくれる人物を探してください。熱をもらって、あなたも熱を振りまく人間になってください。善き地球市民になってください。環境に配慮して、この惑星のことを気にかけて、その他の世界中で起こっていることに目を向けてください。冷めることを気にせず、地球温暖化とは逆にあなたの情熱を温め続けてください。」なんと素敵な言葉の数々でしょう。

 

皆さんは、これから高校に進学します。そして3年後には成人し、選挙権も与えられます。つまりこれからの3年間は大人になるための大事な準備期間という訳です。では「大人になる」とはどういう事でしょうか。皆さんは、今まではいろんな人に与えられ、守られてきました。小さな頃はご家庭で、ご両親やご家族の方々に守られ、学校に通うようになると先生や先輩、友人に守られ、その間将来に生きていくために必要な事を学んできました。今度は大人になり、与え、守る側になります。その時、自分に何ができるのか。自分だけのドーナツは、言うまでもなく皆さんが生涯をかけてやりたいこと。そしてその多くは自分の長所である場合が多いのです。だからまずは、自分が得意な事、好きな事に打ち込みましょう。そして高校時代に一つのことに頑張るという経験自体も生涯を通して、皆さんの精神的な財産になります。

 

皆さんが高校・大学へと進むこれからの時間は、人生の中でも一番楽しく、一番美しく、キラキラと輝く時間です。どうかその時間を一緒に過ごす素敵な友人を見つけてください。その友人は今皆さんのすぐ隣にいるかもしれませんし、もしかしたら遠く離れていてすぐには会えない人かもしれません。楽しい時だけでなく、苦しい時もその苦しみを分かち合ってくれる人を見つけてください。見つかったら、その友人にあなたのドーナツについて話をしてみてください。きっと皆さんの事を応援してくれるでしょうし、もしかしたら一緒にそのドーナツを探す旅に参加してくれるかもしれません。人生でそのような友人がいれば、これほど心強いことはありません。皆さんの可能性は無限大であり、皆さんがこれから歩まれる人生は限りなく美しく、尊いものなのです。

 

今日の卒業式は、人生の一つの節目であるとともに、新しい船出でもあります。その船出に対し、皆さん全員に心からエールを送りたいと思います。がんばれ!常翔生!

 

今日という日を、これから始まる高校生活に向けてさらに力強く一歩を踏み出す、「飛躍」を誓う日にしてください。皆さんの今後の活躍を願い、わたしからの式辞とします。

2023年3月11日

常翔学園中学校

校長 田代 浩和