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「理工系学部を拡充」読売新聞の記事から

2022/08/19

前回のブログで気になる新聞記事と言ったもう一つは、8月15日付け読売新聞一面の「理工系学部を拡充」という記事があったことです。文部科学省は、デジタルや脱炭素分野に関わる理工系学部の新設や拡充を促すため、学部再編に大学を財政支援する方針を固めたというもの。国際的に見て理系の割合はイギリスは45%、韓国で42%、アメリカは38%、日本は35%で、科学立国、工業立国としてはかなり少なく思えます。正直言って、少し遅すぎるとも思いますが、文科省もようやく動き出したようです。

 

今回文科省が理系学部を拡大するに至った理由は「ITや脱炭素などの人材育成」との事ですが、言うまでもなく現在AIや産業技術の進歩により、この2つに限らずあらゆる産業において、「技術革新」が起こっています。それによって、多くの雇用が失われたり、一つの産業が突然消えたりすることもありますし、大企業でも倒産する可能性があります。例えば、自動車業界を例に取ると、今、世界の自動車業界は一気にガソリン車から電気自動車に転換しようとしています。実はガソリン車に比べて電気自動車は必要なパーツもはるかに少なく、その分人の手にかかる事も少なくて済みます。一般的には電気自動車は従来より30%少ない労働力で済みますので、大企業ほど多くの余剰人員を抱えてしまうことになるのです。日本は今までガソリン車の技術において、世界でも12位を争うくらいの高い技術を持っていましたが、電気自動車は全く別のものです。さらに自動運転のテクノロジーはハードよりもソフトの分野なので、Googleのような巨大IT企業までもがこの業界に参入してきており、かつてない激変が起こっています。また、シェアリング経済の影響により、自動車を買う事自体が今後少なくなると予想されています。

 

シェアリング経済と言えば、例えば観光業界ではAirbnbがここ数年間で急激に伸びてきました。現在600万件の宿泊先が確保されていますが、これは世界の大手ホテルチェーン6社の合計客室数を上回るものとなります。世界の観光業界はコロナで多大な影響を受けていますが、Airbnbの場合は元々個人の家なのであまり打撃にはなりません。またかつては、多くの人たちは大手中心に旅行代理店を通して国内外に旅行に行ってましたが、インターネットの発達により、スマホから簡単に飛行機のチケットやホテルの予約ができるようになりました。このように人々の旅行も大きく様変わりしています。

 

そして、今後一番技術革新が起こる分野はAIです。この分野で日本は世界のトップから周回遅れで差をつけられていると言われています。今、世界中でSE、つまりシステムエンジニアが不足していますが、中でも優秀なAIエンジニアは引くて数多となっています。この分野で世界一の大学は中国の清華大学ですが、中国は早くから国を挙げ産官学一体となって取り組んできたこその結果です。博士号を持つAIエンジニアは初任給から1千万円を超え、最近では三千万円の例もあるといわれています。なので、世界の優秀な大学を卒業した若者はなかなか日本の企業に就職しないのも当然です。が、最近になりソニーは730万円、NECは一千万円とまだまだ世界に比べると安いのですが、この分野で高給を出すようになりました。

 

日本においては現在、理系は文系に比べて平均年収は50万円高いと言われています。将来、多くの雇用が無くなると言われていますが、AIエンジニアやシステムエンジニアと言った分野は当分は就職に困る事は無さそうです。常翔学園には、大阪工業大学の情報科学部をはじめとして多くの理系学部があり、どこも就職状況は非常に良いです。本校からは面接試験のみで入学のできる内部進学制度もありますので、文理わけ前の高校一年生の皆さんや中学生の皆さんは是非とも一度考えてもらいたいと思います。