学校長ブログ

BLOG

大学入試の状況(日本経済新聞の記事から)

2022/08/17

最近の新聞記事で、大学入試について2件、気になっていたものがあるのでお知らせしておきます。

まず一つ目です。8月15日付けの日本経済新聞の1面記事で大見出しは「偏差値時代 終幕の足音」。

現在の大学入試は、推薦型とAOなどの総合型の入試が50%を超え、偏差値のデータの基となる一般入試が減っている。この傾向は少子高齢化の影響もあり、さらに続いて、偏差値がやがては役に立たなくなるというものです。

 

偏差値は私が大学入試を経験した時、つまり44年前にはすでに受験指導の一番大きな基準となっていました。大変便利なものでほとんどの受験生は、毎回の模擬テスト受検後にこの偏差値という数字に一喜一憂し、塾・予備校や高校の教員もこの魔法の数字を使って受験指導をしてきました。その一方で、受験生が将来したい事や大学の詳しいカリキュラムよりも偏差値を優先する指導を批判する批評家や教育関係者が多かったのも事実です。その偏差値が終焉する。すこしショッキングな見出しですが、一部の生徒たちは喜んでいるかもしれません。

 

一番大きな理由としては、「学校推薦型」(公募推薦や指定校推薦など)と「総合型」(旧AO入試)が増えた事。関西ではかなり以前から公募推薦がありましたが、指定校推薦も併せて全国的に増えています。さらに国公立大学では「特色入試」などという呼び方もありますが、「推薦・総合型」は現在22%、近いうちに30%を超える予定ですし、将来的には定員の半分という話もあります。またその内容も、AO入試的なものやプレゼンや面接、ディベートなどを含むもの、さらに共通テスト受検が必要なもの、必要でないものと、入試が多様化しています。

 

AO入試はアメリカの入試を倣い、1990年に慶応大学で始まりました。従来の入試は国公立大学にしても私立大学にしても、知識偏重型であり、多様な観点から人物を評価すべきという事で始まったものです。現在ではその流れが加速し、学校の評価も①「知識・技能」②「思考力・判断力・表現力」③「主体的に学習に取り組む態度」の3つの観点から評価する事になりましたが、これと同様の事が入試でも起こっているという事です。

 

もう一つの理由は、18歳人口の減少です。かつては受験戦争と言われていましたが「団塊ジュニア」と呼ばれた世代では200万人いましたが、2000年頃には約150万人、現在は120万人を切っています。かつて「Fランク」という言葉が生まれた2000年後頃の予測では、将来的に入試が機能する大学と機能しない大学に分かれると言われていましたが、その通りになってきたと言わざるを得ません。まさに大学全入時代、選り好みをしなければ誰もが大学に入学できる時代です。こうなるとペーパーテストのみで判定される一般入試を受ける受験生はますます少なくなり、偏差値という数字を出すのに必要なデータが不足してきますし、全員が合格すれば偏差値自体の意味がなくなります。

 

さて、明治以来の大改革と言われる、三位一体の改革が始まりました。共通テストもかつてのセンター試験から大きく様変わりしてきました。英語も細かな文法問題や発音問題は全く無くなり、圧倒的な長文読解能力やリスニング能力が必要になりました。なので、普段そのような勉強をしていなかった受験生が共通テストで点数が取れずに「番狂わせが起こった」という現象がいろんな教科で全国的に見られたと思います。しかし、確かに思考力や表現力も問われるようにはなりましたが、大前提として知識のインプットが無ければアウトプットもできません。その意味で、バランスの良い問題作成を入試だけでなく、学校の定期テストや模擬テストでも出題すべきですが、相変わらず「知識」偏重型の入試も私大入試には多く見られるので、偏差値もすぐに終わるという事はないのではないでしょうか。