学校長ブログ

BLOG

2023年度入学式式辞

2023/04/08

式 辞

 皆さん、おはようございます。春の訪れと共に、いよいよコロナも収束しつつあり、そのような中で2023年度常翔学園中学校・高等学校の入学式を挙行し、保護者、ご来賓の方々と共に皆さんの入学をお祝いできる事は本当にうれしい限りです。

 

ただいま入学を許可しました新入生の皆さん、誠におめでとうございます。すべての教職員を代表し、皆さんの入学を心より歓迎します。皆さんにとって、今日の入学式はこれから始まる新しい節目の日になります。

 

保護者の皆様方におかれましては、本日は、お子様のご入学、誠におめでとうございます。そして、数ある学校のなかから本校に入学いただいたこと、本当にありがたく心より感謝申し上げます。私たちは、本日から皆様方の大切なお子様をお預かりし、皆様方のご期待に添えるよう、精一杯の努力をして参ります。何卒ご支援・ご協力の程、よろしくお願いいたします。

 

さて、まずは皆さんが入学した常翔学園について、少し説明をしておきます。常翔学園は、1922年、大正11年に開校した関西工学専修学校という学校に始まり、昨年学園創立100周年を迎えた歴史ある学園です。現在は3大学、2高校、2中学を擁する関西でも有数の学園となっています。これまでに多くの人が卒業し、国内外の各方面で活躍をされています。高校はこの関西工学専修学校中等部の流れを引き継いだ摂南工業学校と1933年開校の関西工業学校とが1948年に合併して新制高校の摂南学園高等学校となり、その後すぐの1950年には大阪工業大学高等学校に改称、それから長い年月を経て2008年に常翔学園高等学校と改称して現在に至っています。一方中学校は、2011年に開校した大阪の私立中学ではまだまだ歴史の浅い学校ですが、ようやく12年が経ちました。本日入学の皆さんは13期生になります。

 

さて、話題は変わりますが、皆さんは今話題のChatGPTというAIアプリをご存知でしょうか。スマホで無料で使え、どんな質問にも答えてくれる便利なAIアプリです。アメリカではすでに医師の国家試験や司法試験に合格できるレベルになっています。知識技能は、AIに聞いたら何でも答えてくれる世の中になりました。皆さんの学習をサポートしてくれたり、プログラミングまでやってくれます。その他にも、自分の写真からアバターを作ったり、アニメにしてくれたりするAIアプリを使っている人もいるかと思います。

 

かつて2045年と言われたシンギュラリティを待たずして、生活の中、仕事の中に当たり前のようにAIが入ってきて、すでにAIなしでは世の中が回らなくなってきています。知識についてはAIに聞けば何でも分かるわけですから、学校において学ぶ意味をもう一度考え直さないといけない時代になりました。また学校の意味、教師の役割までもが変わりつつあります。

 

これからの時代は、AIを使う人か、AIに使われる人かで人間は2種類に分けられると言われますが、皆さんはどちらの人になりたいですか。そう聞かれたら、迷わずAIを使う方、と答えると思います。しかし、楽なのはAIに使われる方です。将来は全てをAIに委ねて皆さんは何も考えず、身の回りのことは何でも機械がやってくれるようになるかもしれません。でも、皆さんはそんな生き方を望みますか。

 

数年前に「ホモデウス」という本が世界的に大ヒットしました。著者であるイスラエルの哲学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏は、こう述べてます。

「AIが発達し、テクノロジーの進化によって、人間の身体や脳機能の進化もおき、人間には今までにない大きなめまぐるしい変化が訪れる時代がやってくる。そんな時代に最も大切なことは、自分自身を知ること、自分が何者であるのかを理解すること。そして、一生学び続けて、自己変容していくことが必要だ。」

 

考えること、学ぶことを止め、AIに使われるだけの人間はやがてAIにデータを提供するだけの無能者階級となるという内容は、本当にショッキングなものでした。しかし、ついに登場したChatGPTはその現実性を増しています。

 

中学・高校では、学習指導要領が新しくなり「主体的対話的で深い学び」が学校教育の主流となりましたが、「主体的対話的で深い学び」が必要な理由はAIの台頭を考えるとよく理解できます。つまり、AIに使われるのではなく自らが主体となり、他の人々と対話を通して深く学び考え、合意形成をしていく。まさに機械ではなく人間らしさを追求する教育です。そういった事がこれほどまでに大事な時代はかつてありませんでした。多様性社会の中で生きていく力は、多様な考えが存在する空気の中でしか醸成できないのです。

 

現代はDiversity &Inclusionの時代と言われます。「多様性と包括性」つまり、世の中にはいろんな人がいて、それぞれの存在を認めあい、共に生きる。実は今年度からの本校の新しい将来像も「人々が幸福で平和に生きることのできる世の中を創るため、生徒中心の教育を重視し、グローバルシチズンシップを身につけた自律的学習者を育成する教育先進校となる。」としており、目指すところは同じです。

 

皆さんは今からの3年間、中学生は6年間で、その多様性社会の中で生きていく術を学びます。皆さんが学校に一堂に会して学ぶ意味は、まさにそこにあります。時には上手くいかない事もあり、人間関係や進路のことで悩んだりもするでしょう。中には学校に行きたくないとさえ思う人もいるかもしれません。でもそういう時こそが人として一番成長している時なのです。決して、自分を責めて、価値のない人間なんだとか、人より劣っていると、思わないでください。

 

人はそれぞれに生まれてきた目的があるのだと私は思っています。それが故に全ての人には何か一つ以上の長所があります。だからこそ、全ての人は尊い。でも、なかなかそれが分からないから、自分探しをするのです。そして、子どもから大人へ変化し、成長するこれからの時間は、人生の中で一番美しく輝く時です。中学校の卒業式でも申しましたが、できればその時を一緒に過ごす友を見つけてください。喜びや苦しみを分かちあえる友を作ってください。その友と夢を語りあい、一緒に自分探しをしましょう。この時期に知り合う友は一生の宝となります。

 

最後に、本日入学された新入生の皆さんにエールを送る意味で、私が大好きな言葉を紹介したいと思います。This is your life.で始まる、アメリカのHolsteeという会社のマニュフェスト、日本で言う社訓です。英語で少し長いですが、読むとすごく元気が出てくる文章です。This is your life でネット検索するとたくさん出てきますから、是非検索してみてください。

 

This is your life. とは、もちろん「これはあなたの人生です」という意味です。皆さんが生きていく人生は、他の誰でもないあなたのものだから、後で後悔しないように、自分で決めて、自分で責任を持って、自分の人生を楽しんでください。といった内容です。いろんな理由があると思いますが、皆さんは自分で常翔を選んで、本日入学されました。皆さんの人生ですから、皆さんが常翔でやりたいと思う事を思い切りやってください。そこには、こういう一文があります。「人生とは、あなたが出会う人たちの事であり、その人たちとあなたがつくるもの。」皆さんが、良き友人と教師に恵まれ、最高の学校生活を送られる事を祈念しまして、わたしの式辞といたします。

 

2023年4月7日

常翔学園中学校・高等学校

校長 田代 浩和